今様つれづれ草

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行動こそが平和達成の原動力

2023年5月19日からはじまった「G7広島サミット」は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化すると明記し、現実的なアプローチを通じて『核兵器のない世界』に向けて取り組む」との首脳宣言を発表、21日に閉会しました。

 

ホスト国・日本の岸田文雄首相は、サミット会議に先立ち「平和記念公園」にある「平和祈念資料館」前でイタリアのジョルジャ・メローニ首相、カナダのジャスティン・トルドー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、米国ジョセフ・バイデン大統領、英国のルシ・スナク首相、ドイツのオラフ・ショルツ首相、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長を満面の笑みで出迎え、およそ15分ほどの時間をかけ資料館内を案内しました。資料館を後にした各国首脳の表情には、戸惑いと沈黙、苦悩と苛立ちそして困惑が溢れていました。

ところで「平和祈念公園」の片隅には、“遠慮深く”ひっそりと立つ3基の記念碑があります。

 

1基目はアメリカの文芸誌「サタデー・レビュー」の編集長ノーマン・カズンズの碑です。「世界平和は努力しなければ達成できるものではない。目標を明確に定め責任ある行動をとることこそ人類に課せられた責務である」と彼の生涯におよぶ信念が書かれています。

 

1949年(昭和24年)広島を訪れたカズンズは、ルポ「4年後のヒロシマ」を発表、その中で原爆や戦争で肉親を失った子供たちを育成する「精神養子」(善意のアメリカ人が子供たちを法的ではない養子縁組を結んで養育費を送金、彼らの成長を支える“制度”)を提唱、およそ500人の子供が「精神養子」となり総額として2,000万円の援助が行われました。

 

さらに1955年(昭和30年)被爆女性たちのケロイド治療の支援に尽力、25人の若い女性がニューヨークのマウントサイナイ病院で形成外科の名医アーサー・バースキー教授らの治療を受けました。余談になりますが、1956年に来日した教授は、東大医学会で「広島原爆乙女の治療を中心としたPlastic surgery」と題する講演を行っています。教授の講演が契機となり、1960年にわが国で最初となる独立した形成外科診療科が東京大学に設置されています。

2つ目の顕彰碑の碑文には「I too, am a Hibakusha」(私もまた被爆者です)とあり、続けて「私の心は、いつもヒバクシャヒロシマとともにあります」と英文で書かれています。顕彰碑で讃えられている人物はワールド・フレンドシップ・センター」(広島市西区東観音8-10)の創立者のバーバラ・レイノルズ女史その人です。

 

アメリカの平和運動家でもあったバーバラ女史は1951年(昭和26年)に原爆傷害調査委員会の研究員だった人類学者の夫アール・レイノルズとともに広島を訪れ、原爆被害の悲惨さを身近に知ることになりました。

 

 

その後1958年には、太平洋エニウェトフ環礁の立ち入り禁止海域にヨットで乗り入れ、アメリカの水爆実験に強く抗議しています。バーバラ・レイノルズ女史の“愛と勇気と人類愛”にあふれる活動を称えた記念碑は2011年6月12日に除幕式が行われました。除幕式にあたって女史の愛娘ジェシカ・レイノルズ・レンショウは原子力の脅威について一文を寄せていますが、その要旨はワールド・フレンドシップ・センターの雑誌「友愛」第144号に掲載されています。

 

 

「1945年以降、広島と長崎に始まって沢山の人々がチェルノブイリやスリーマイル島そしてまた福島で放射能という毒物に晒されています。放射能は戦争と平和等状況を選びません。核兵器の放つ放射能は戦争が終わった後でも人々殺戮し続けます。DNAを組み換え、従って後の世代まで傷つけます。原子炉に事故があろうと無かろうと近隣の住民の発がん率を高めます。こうして放射能に晒された方々も原子力利用の被害者となるのです。「ノーモア広島」「ノーモア長崎」そして「ノーモア福島」。

3つ目の顕彰碑は、1925年(昭和20年)8月9日に赤十字国際委員会の駐日主席代表として来日したスイス人医師のマルセル・ジュノー博士の功績を称えるものです。博士の“無償の愛”は日本でアニメ映画でも紹介されています。

 

ジュノー博士は広島の原爆被災の惨状を知るや占領軍総司令部に駆けつけ広島救済を強く訴えました。9月8日には15トンもの医薬品を携え、広島入りしました。惨禍の実情を踏査し悲惨な状況を目の当たりにした博士は、国際赤十字が掲げるヒューマニズムの精神に則り、率先して被爆者の治療にあたり多くの市民を救っています。

 

博士の尽力でもたらされたお薬品は市内の各救護所に配布され数しれない被災者を救いました。因みに博士が運んだ医薬品には、血液から血球を除いて血漿を凍結した乾燥血漿やペニシリンなど抗生物質、それに細菌感染症に対する化学療法剤とDDTおよび、包帯など治療にあったて即必要とされるものばかりでした。

 

以上の“偉人”の行動を知れば知るほど、私たち人類にとって今必要なことは「目標を明確に定め責任ある行動をとること、これこそ人類に課せられた責務」と思わざるを得ません。